胸腺その2 1Muscle.com

香草に似た臓器

新型コロナの重篤者で免疫細胞(T細胞)が激減しているということを受け、T細胞が造られる場所、胸腺への注目が上がっている。

胸腺は英語でサイマス呼ばれる。これは香草のタイムと同じである。

胸腺の形がタイムの葉っぱに似ているからだという。

胸腺は思春期頃に最大で、それ以降徐々に萎縮を続け、40歳くらいからは萎縮が加速 (Kumar 2018) して大体65歳位頃には消失している。

この胸腺の消失は脊椎動物の多くで共通しており、胸腺の萎縮による免疫の不全は晩年感染症やがんにかかりやすくなる元であるとされている。(Palmer 2018)

人間の場合、身体各部での免疫T細胞の産生能力が50歳以降でもある程度発揮される。(Kumar 2018)

逆に言うと中年以降は胸腺では無く末端の免疫能力がモノを言うということだ。

 

ビタミンDとプロテイン

少し遡って元々の胸腺の発達は実は母親の胎内にいる時の栄養で左右される。

まず妊娠前に耐糖能を上げておくことが肝要で、母親が妊娠性糖尿病で無い方が胎児の胸腺が(比率として)大きいという報告がある。(Dörnemann 2016)

従って我々の免疫は生まれる以前から胸腺の発達という形で準備され、生後の免疫不全や自己免疫疾患の発生リスクに影響する。(Chen 2016)

胎児の胸腺発達を左右する栄養素の一つはビタミンDである。

母体のビタミンDレベルが低いと胎児の胸腺が十分でなくなる (Gur 2016) というリスクがある。

また、先に挙げた文章 (Chen 2016) とも呼応するが、母体のビタミンDレベルが十分でないことが生後の健康や病気のリスクを左右するとする見方は強まって来ている。(Ideraabdullah 2019)

意外と知られていないのはビタミンDはアナボリックホルモンであり、ステロイド系でもあるということだ。

もちろん筋肉増強剤とは全く異なるが、同化を向上させるものはアナボリックなのである。

案の定、ビタミンD同様、プロテインの充足は胸腺の発達に欠かすことが出来ず、プロテイン不足になると胸腺が十分に発達しないのはある程度周知として記述されている。(Varga 2011)

 

必ず登場・ビタミンC

多岐にわたる効果が標榜されるビタミンCも胸腺の健康に寄与する。

胸腺中のT細胞が成熟するのにビタミンCが必要だからである。(Manning 2013)

ビタミンCは身体中の至るところにある程度蓄積されているが、リンパ球には血漿の80倍ものビタミンCが蓄積されているのである。(Evans 1982)

言うまでもなく胸腺の老化は身体の中でも速い部類である。(Griffith 2015)

一般に胸腺の老化は間質細胞の酸化(H2O2)ダメージ主導で促進される。(Griffith 2015)

つまり酸化ダメージで胸腺の萎縮が早まるということであり、アンチオキシダントをふんだんに摂ることが胸腺やT細胞の疲弊防止に役立つと考えられる。

 

耐糖能を上げよう

耐糖能を上げることは糖尿病を治癒することに等しい。

糖尿病患者が感染しやすい理由として、T細胞の活性化と増殖にはグルコースとグルタミンの消費をアップする能力が必要だから、というアングルが考えられる。(MacIver 2013)

それに活性化されたT細胞は炎症性サイトカインを発する (Cohen 2017) のでアンチオキシダントをたっぷりにして酸化キャパを上げておいたほうが得策だ。

なおこのグルコース → T細胞活性化 → 炎症促進は「レプチンによる脂肪燃焼効果」の一部として関わってくる。

少しビタミンDに戻るが、胸腺が消失して以降、免疫システムは末端での対応に依存するということは述べた。(Kumar 2018)

このことと日焼けによる末端でのビタミンD生成とが非常に強く繋がってくるのではないだろうか?


T細胞のための栄養総括

・ビタミンDレベルを十分に


・日光をたっぷり浴びる


・蛋白質(プロテイン)をたっぷり摂る


・アンチオキシダントをたっぷり摂る


・グルコース代謝促進=耐糖能向上を目指す

 

出典

Reference:

Kumar BV, Connors TJ, Farber DL. Human T Cell Development, Localization, and Function throughout Life. Immunity. 2018;48(2):202‐213. doi:10.1016/j.immuni.2018.01.007

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